今日はバッグ取出しと同時のコンデンスリッチ豊胸、そして3Dセルリフトの手術でした。手術は問題なく終わっています。お疲れ様でした。
また今日は、シリコンバッグ外来にも数人いらっしゃいました。
シリコンバッグ(乳房インプラント)は、豊胸や乳房再建としてとても優れた素材です。ただし、やはり挿入された方の何割かはその違和感に悩まされているようです。
最も多いのが触感です。つまり硬さという事になります。この硬さの原因には大きく分けると2つあります。
①バッグ自体の硬さ・・・・10年前は主流だったジェル状シリコンで、シリコンを包む膜の薄いものは正直とても軟らかく、上手に挿入されているとかなり本物に近いものでしたが、やはり破れやすい、そして、破れるとカプセル拘縮が起きやすいといった欠点がありました。そして今の(少なくとも日本の)主流は、破れにくく、破れても流れ出さないタイプ(コヒーシブタイプ)ですがやはり多少の硬さがあります。ラウンド型(丸いアンパン状のもの)やアナトミカル型(ティアドロップ型)いずれにせよ(多少アナトミカル型の方が硬い傾向にあります)自分の自然な胸に比べると硬いです。(実はヒアルロン酸も、皆さんが思っていらっしゃるよりも硬く、特に最近の吸収されにくいもの:分子量が大きい素材)は随分硬いです)
②もう一つはカプセル拘縮と呼ばれるもので、バッグが挿入されたスペース(バッグを挿入するとそのバッグの周りに自分の被膜:カプセルが形成されます)この被膜(カプセル)の体積=スペースが狭くなり、バッグが締め付けられるのがカプセル拘縮と呼ばれるものです。
このカプセル拘縮を防ぐため、A:つるつる(スムーズ)タイプのバッグを挿入後マッサージを強く行いスペースを広く確保する・・・・マッサージ時に痛みが強く最近ではあまり好まれません。B:ざらざら(テクスチャード)タイプのタイプのバッグを挿入後、ほとんどマッサージしない・・・・今はこれが主流・・・があります。
しかし実際にはこのカプセル拘縮がゼロという事はありません。
この診断には、「Beckerの被膜拘縮分類」という分類法がありグレード1~4までがあります。 「カプセル拘縮」診断の基準となっています。
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- 乳房は柔らかく、埋入した異物の感触が、ほとんどない自然なもの。
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- よく触れるとインプラントがわかるが、かなり柔らかく患者にあまり苦情がない。
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- 患者自身が硬いという。外見上は美容的に可であるが、触れるとインプラントがはっきりわかる。
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- 拘縮がはっきりして、見ても異常感があり、触れればテニス硬球状である。
今の時代(コヒーシブシリコン(流れ出さないタイプ)・テクスチャード(ざらざら)タイプを主流とする)でGrade1という事は、(外来を含め)経験上そして理論上(医学論文、医学学会)を総合して考えるとかなり困難だと考えます。
そう考えると、上手くいってGrade2です。
もちろん脂肪注入も質が良くない脂肪を下手に注入すると大きなしこりが出来ますが、バッグ挿入も”Grade4で大きくもなっていない”といった残念な結果もありえます。
バッグ(インプラント)挿入が正しい、脂肪注入、(あるいは筋肉皮弁)が正しいといった事は誰も分からないことです。
ただ一つ言える事は、私たち外科医は、常に今よりも優れた手術ができるよう、向上心を持って一つ一つの手術を心を込めて行う必要があると思います。・・・当たり前なのですが、あえて書きます。
今日も手術をなさって下さった方、そして手術に携わってくれたスタッフに感謝です。