今日の手術は、FATBANKに保存のCRFでの豊胸、顔アンチエイジング手術(脂肪による目の下のクマ、頬の高さ治療)を行いました。手術は無事終わっています。お疲れ様でした。
さて、今日は、ずいぶん昔の話になりますが、私の人生の中で最も感動した手術のお話をしたいと思います。
年は1999年、私がまだカナダのトロント大学病院(Toronto General Hospital)で研修医として(主に心臓の)手術の勉強をしていた時です。
私が留学先にToronto General Hospitalを選んだ理由は、その病院に天才心臓血管外科医がいらっしゃったことです。名前は Tirone E. David医師です。心臓手術に関わるドクターで彼の名前を知らない人はおそらくいないと思います。
その日はオープンライブサージャリ―(公開手術)の日で、全世界から100人を超す(そうそうたるメンバーの)心臓外科医達が講堂に集まっていました。
彼はオペ室で実際に手術している映像を、リアルタイムで講堂の大きなモニターに映し、手術の説明をしながら他のドクターの質問に答えます。
予定手術は大動脈弁閉鎖不全症の治療で、自分の大動脈弁は温存し(人工弁を用いないで)、上行大動脈の人工血管置換と冠動脈を移植を組み合わせた、いわゆるDavid 手術でした。もちろん世界中から見に来たドクターはその(困難な)David手術を見たくて全世界から集まった方々がほとんどです。
手術が始まり、実際の患者さんの大動脈弁を見て、彼は何と予定術式を(見に来ている全てのドクターの期待を裏切って)変更、上行大動脈の人工血管置換手術だけを行いました。
もちろん彼は難しい彼オリジナルの手術(David手術)をすることは容易だったでしょう。また、集まったドクターがDavid手術を期待して見に来ていたことも知っていたはずです。
ただ、彼は目の前の患者さんの事を考え、その時ベストの判断をして、ベストの手術をしたのです。
置換直後の術中のエコーで逆流はそのシンプルな手術で完全に消失。
その瞬間、講堂は全員拍手喝采の嵐でした。
周りのドクター達も、誰一人”期待してた手術じゃなくて残念”なんていう人は誰もいませんでした。
その患者さんにとってベストの手術をするという 、その勇姿に、ただ、感動したのだと思います。
その姿を見て、私は彼のような医者になりたいと“心から”思った事を今でも鮮明に覚えています。
幸いにも、今私は、(規模は大きくありませんが)ライブサージェリーをする側となっています。
VASER、CRFセミナーとして実際の手術を他のドクターから見ていただいています。もちろんセミナーには日本全国から、若い先生もいらっしゃれば、大御所の先生もいらっしゃいます。ただ、こういったセミナーで、たくさんの先生方と、いろんなディスカッションだ出来る事だけでも大きなメリットになっています。このような機会を頻回にさせていただける環境を幸いに思います。
そして、一例一例、上述の手術の様に、その患者様にとって、最も良い手術を提供していきます。
今日も手術をお受けになった方々、そして、手術に関わってくれたスタッフに感謝です。
文献
- 1)David TE, Feindel CM: An aortic valve-sparing operation for patients with aortic incompetence and aneurysm of the ascending aorta. J Thorac Cardiovasc Surg 1992; 103:617.
- 2)David TE, Feindel CM, Bos J: Repair of the aortic valve in patients with aortic insufficiency and aortic root aneurysm. J Thorac Cardiovasc Surg 1995; 109:345.
- 3)David TE, Armstrong S, Ivanov J, et al: Results of aortic valve-sparing operations. J Thorac Cardiovasc Surg 2001; 122:39.
- 4)David TE: Aortic valve sparing operations for aortic root aneurysm. Sem Thorac Cardiovasc Surg 2001; 13:291.