今日はベイザーリポ(ベイザー脂肪吸引)とコンデンスリッチ豊胸の手術でした。
ベイザーリポの方はお腹周りと背中、二の腕と広範囲の脂肪吸引、コンデンスリッチ豊胸は2回目の方でした。
手術は問題なく終わっています。お疲れ様でした。
さて今日は2回目のコンデンスリッチ豊胸に関しての話です。
もちろん1回でできるだけ大きくというのは皆さんと同じく、僕たち術者もまったく同じ気持ちです。
毎回、少しでも大きく、少しでも脂肪壊死やしこり等の合併症を少なくという一心で行っています。
ただ、皆さんもご存知の様に1回での注入には限界もあります。
今までお話してきましたように、一度にたくさんの脂肪を入れ過ぎると、しこりという感触だけの問題ではなく、脂肪壊死(高熱、痛みが出て苦しいだけでなく定着が悪くなります)さらには感染症といった最悪のシナリオの原因となります。
よって、適切な脂肪(コンデンスリッチファットのように単体体積あたりの脂肪幹細胞の割合が高く、不純物が少ない)を適量、そして適切なテクニック(マルチプルレイヤー兼マルチプル・ディフューズ・インジェクション:多層にまんべんなく)を用いて注入することが重要です。
そして、もう一つ。
皮膚の定着の大きな要因は皮膚のテンション(張力)です。
簡潔に言うと、皮膚の伸展が悪ければ、いくら良い脂肪をどんなに上手に注入しても定着率は決して高くないです。(もちろん、質の悪い脂肪を悪いテクニックで入れればもっと悪いです)
そこで、考えられるのが2回目の注入です。
先にも言ったように1回で満足してもらうのが私たちの第一の望みですが、現在最高の医療を提供しても限界があります。
よって、2回目の注入といった選択があるのです。
幸い初回の手術で、術後の腫れも加わり、皮膚のテンションが一時的に上がり、皮膚が伸展されます。その隙間を埋める形で2回目を注入して、より満足度の高い(大きくて柔らか、そして合併症が少ない)胸が形成可能になります。
時には(結果重視の方は)わざと二回に分けて注入したりすることもあります。
すこし余談になりますが、
以前(10年くらい前)、夜間中の胸を陰圧に保ち胸を腫らせる”ブラバ”という機械がありました。・・・しかし、大がかりで高価で効果が低かったため、今は使わなくなっています。
しかしこれが今、豊胸大国の米国ではにわかに人気を集めています。
理由はブラバで腫れたスペースを利用して脂肪注入するというものです。
権威ある形成外科の雑誌 P.R.S(Plast.Reconstr.Surg.)で昨年紹介された論文は、初めに生食バッグによる豊胸をして、さらにブラバを併用して皮膚を進展させ、バッグの抜去と共に脂肪を注入する(SIEF: Simultaneous Implant Exchange with Fat)というものです。
もちろん、初回のバッグ挿入には(脇からの)生食バッグ挿入が必要ですし、高価かつ、不便なブラバをしばらく毎日装着しなければならない為、今の日本人のスタイルには合っているかどうかは別にして、話題性のある方法です。
(2012年12月29日ブログ参照:https://ameblo.jp/theclinic-ohashi/entry-11437893438.html)
前記論文からも言える事は、皮膚のテンションが、①脂肪の質 ②注入テクニックと並んで大切な要素になってくるというわけです。
この結果は、今月開催の美容外科学会で発表する「バッグ摘出と同時のコンデンスリッチ豊胸」の良好な成績に合致します。
よって、今日手術をお受けのなった方のように、張力の関係、脂肪の定着する土台(培地)が多い事等を加味すると、2回目の豊胸は・・・結果を重視する場合・・・実は“アリ”の選択と言えるかもしれません。
医学の進歩で、色んなことが分かってきました。やってはいけないこと、そして良いこと、すべきこと等々です。
今月の美容外科学会では乳房のセッション、脂肪注入のセッションもあります。
(私も座長を務めさせてただきますし、発表もします。)
全世界から集まる美容外科医、形成外科医の先生方の発表が楽しみです。
今日も手術をなさってくれた方、そして手術に携わってくれたスタッフに感謝です。